WikiGap2024参加記

山川菊栄の航跡:「私の運動史」と著作目録』ドメス出版、1979

WikiGapには2019年以来何回か参加していましたが、このところオンラインイベントが続いていました。今年は5年ぶりにオフライン開催との案内が来たので、早速申し込みました。3月3日、神奈川県立図書館で、テーマは「山川菊栄」とのこと。なじみのない名前でしたが、近くの図書館で関連する本を取り寄せてみると、戦前から戦後にかけて女性の権利拡張のために尽力した偉大な人物であることがわかってきました。

イベントのページには「加筆や出典追加が望まれる項目」が出ていたので、その中から「ベッシー・ビアティー」を選び、英語版ウィキペディアから翻訳してみました。このアメリカのジャーナリストは、1917年に仲間とロシアへ取材旅行に出かけ、ロシア革命の最中の重要人物から貴重な情報を得て『ロシアの赤い心臓』という本にまとめました。山川はその中から「革命ロシアと婦人」という章を翻訳し、他の人の文章と併せて『黎明期のロシア』という本を1923年に出版しているのです。山川は1912年に女子英学塾(現:津田塾大学)を卒業し、数多くの英文記事を翻訳して日本に紹介していたのでした。『黎明期のロシア』はNDLデジタルコレクションに入っているので、全文を読むことができます。

神奈川県立図書館(筆者撮影、2024.3.3)

さてイベント当日になり、電車に乗って紅葉山の神奈川県立図書館へ向かいました。午前中は山川菊栄記念会の方から山川について概要をうかがいましたが、戦前にもこのようなアクティブな女性がいたことに改めて感銘を受けました。また山川の資料が没後に神奈川県立婦人総合センターへ納められ、その後県立図書館へ移管された経緯も、県立図書館の方から詳しく説明がありました。現在は図書館内に紹介コーナーが設けられ、様々な機会に活用されているそうです。

掃部山公園にある井伊直弼銅像(筆者撮影、2024.3.3)

ランチ休憩には隣の掃部山公園でおにぎりを食べました。春らしい暖かい空気の中で井伊直弼銅像も気持ちよさそうでした。

午後はいよいよエディタソンです。20名ほどの参加者は男女半々、Swaneeさん、のりまきさん、さえぼーさんなど超ベテランから初心者まで様々な顔ぶれでした。中には北海道や新潟からはるばるいらした方も。編集作業では、初心者の方たちは「山川菊栄」「山川菊栄賞」などのすでにある項目に出典を追加する作業に取り組まれました。私は準備してきた「ベッシー・ビアティー」の記事を公開した後は、初心者グループのサポートに回りました。いろいろな質問が飛び交い、サポート役のメンバーがそれぞれ対応し、あっというまの終了時刻。最終報告によると新規記事6件、加筆記事28件、全参加者27名となりました。どなたも何かしら記事を書いたり加筆したりして満足そうな笑顔、笑顔。参加記念のWikiGapバッチやステッカーをいただき、散会となりました。

当日資料とWikiGapバッチ、ステッカー

それから横浜駅まで繰り出して中華料理店で懇親会です。ほとんどの参加者が席に加わり、これまでの経験をお互い披露したりしてなごやかに時を過ごしました。後日参加記を英語版Diffに書いておきました。

さてこのオフラインイベントとは別に、オンラインのWikiGap2024も3日から8日まで併せて開催されました。こちらは現地参加できない方が中心でしたが、私も山川菊栄以外に準備していた記事を出しました。1月から読み進めている『砂漠の林檎:イスラエル短篇傑作選』の中から、「サヴィヨン・リーブレヒト」と「イリット・アミエル」という二人の女性作家の記事です。イスラエル作家の作品を読んだのは初めてでしたが、ヨーロッパのホロコーストを逃れてパレスチナにたどり着き、イスラエル建国を経て現在に至る様々な人生を知りました。本はまだまだ先があるので、これからも作家を追加していく予定です。

8日までまだ日数があったので、Diffで知ったアメリカのウィキペディアン、アニー・ラウダさんの記事を英語版から翻訳して出しました。1999年生まれのZ世代であるラウダさんは、大学2年生の時パンデミックとなり、「デプス・オブ・ウィキペディア」というSNSアカウントを作ってコメディタッチでウィキペディアを紹介したそうです。それが全米を横断するツアーにも発展し、インターネット上での有名人となりました。こうしたダイナミックな若者の行動力に圧倒され、世界を見る眼がまた一つ広がった思いです。

このオンラインイベントは最終的に参加者9名、新規作成21件、加筆19件という結果でした。新規作成の内いくつもが「新しい記事」に選ばれ、めでたいことでした。

■参考

※オフラインの主催はWikiGapかながわ実行委員会、共催は神奈川県立図書館、後援は山川菊栄記念会でした。