■Abstract: Shimizu Choha/Gaziantep Airport/World Central Kitchen/Maria Stepanova/The Shibusawa Eiichi Denki Shiryo
2023年2月は新規記事5件、加筆記事2件、翻訳記事6件、計13件の記事をWikipediaで執筆しました。その中からいくつかメモしておきます。
2月初めのある日、見知らぬ英語圏の方から突然メッセージがきて、「“Doppo-an Choha”(Q116505319)というのを“独歩ーあん 著は”としてみたが日本語としてあってますか?」と英語で聞かれました。Q番号はWikidataの番号なのですが、“Doppo-an Choha”という言葉は全く知りません。けれど日本語としては明らかにおかしいのであれこれ調べてみると、江戸時代の俳人清水超波の別名「独歩庵超波」とわかりました。NDLデジタルコレクションでいくつか典拠資料があったので、せっかくだからウィキペディアに「清水超波」で出しておきました。質問者にはすぐ返事をしたのですが、その後音沙汰がないのでどういう方かはわかりません。それでも地球のどこかでこういうテーマに興味を持つ人がいるのを知ったのは楽しかったです。
2月6日にトルコ南部で発生した地震を受け、ウィキペディアンとして何かできることがあるだろうかと考えました。トルコに特別な縁は無いので、まずは地名を知りたく、報道される被災地の中にガズィアンテプとあるのが目に留まりました。トルコ南東部国境近くのまさに震源地です。ウィキペディアに既に記事がありましたが、そのなかの「ガズィアンテプ空港」は赤字リンクだったので、これを英語版から翻訳して9日に出しました。知らない土地の記事を訳すのはなかなか手間なのですが、空港といった施設であれば他の空港の記事を参考にできるのです。このガズィアンテプ空港にはいくつかの航空会社が乗り入れていますが、国外の就航地はほとんどがドイツの空港で、ドイツとトルコの結びつきの強さを再認識しました。公式サイトのリンクを見ると現在空港は閉鎖されておらず、飛行機も運航されているようで、少し安心しました。
その後ウィキペディアには「災害」記事執筆の指針があることを知りました。そこには災害発生直後の記事作成は避けること、なぜなら状況把握が不十分なままで名称も不確定な記事は百科事典として相応しくない、とあります。ウィキペディアは速報を載せるニュースサイトでなく百科事典なのだ、というのを改めて心にとめました。そこでじっくりニュース報道に気を付けていると、22日の新聞でトルコ・シリアの地震被災地で食事を提供しているNGO「ワールド・セントラル・キッチン」を知りました。2010年に発足したこのNGOは、まず現地に入って現地の食材で食事を作り被災者に配布。その次の段階で現地の人たちが自ら食事を作って配れるように支援していくのです。昨年はウクライナでも活動していて、これはすごいなあと思い英語版から翻訳して出しました。また主導しているシェフのホセ・アンドレスの著書『島を救ったキッチン:シェフの災害支援日記inハリケーン被災地・プエルトリコ』の翻訳が出ているのを知り、近くの図書館から借りて読み、ブログに概要をまとめておきました。この本でアメリカという国の災害救援の現場について、いろいろ知ることができました。なおトルコ・シリアの地震についてはこれからも折を見て関連記事を出していこうと思っています。トルコに縁はなくてもすこしだけ思い入れがあり、そのことは別途書いておくつもりです。
■ホセ・アンドレス『島を救ったキッチン』を読む(Kadoさんのブログ 2023-02-27)
ウクライナ関連では、ロシアの詩人「マリア・ステパノヴァ」を英語版から翻訳しました。この人については詩人四元康祐が日経新聞日曜版コラム「詩探しの旅」で紹介していて知りました。彼女は当局の監視を受ける投資家を避け、クラウドファンディングでColta.ruというメディアを立ち上げ、芸術文化の分野でロシア国内外で進行中の現代の情熱的な見方を発信しています。「colta」は元々イタリア語で、「収穫」「教育」「啓発」というような意味です。ウクライナ侵攻時にステパノヴァはアメリカ滞在中で、そのすぐ後に『プーチンの想像の産物としての戦争』というエッセイをイギリスのフィナンシャル・タイムズ紙に発表したそうです。ロシアとウクライナについても引き続きウォッチしていくつもりです。先日はロシア文学者沼野恭子さんが「ロシアを反面教師に─ロシア・ウクライナ戦争から得られる教訓」という記事を「クーリエ・ジャポン 2023.2.24」に発表されていて、参考になりました。
そのほか「渋沢栄一伝記資料」が2月16日にウィキペディアの「新しい記事」に選ばれて嬉しかったです。私が書く記事は歴史の隅っこに眠っているようなマイナーな話題が多いと自覚していますが、それでも他のウィキペディアンの方が関心を持って下さったことで利用が広がればなによりです。
2月28日には国会図書館のウェビナー「日本研究のための情報資源活用法」を視聴しました。NDLデジタルコレクション以外にもデジタル化された様々な情報源とそれぞれの特性を知ることができ、これからの記事作成に利用したいと思います。
■国立国会図書館(NDL)、ウェビナー「日本研究のための情報源活用法」を開催(カレントアウェアネス 2023年02月06日)