さまざまなウィキペディアンと出会う

恩納村の名勝「万座毛」 筆者撮影2019-02-05

ウィキペディア執筆は2016年以来ほとんど進んでいなかったのですが、2018年の図書館総合展でOpenGLAM JAPAN主催の「ウィキペディアOpenStreetMap編集の実際」というイベントを見つけて申し込み、10月31日会場のパシフィコ横浜に出かけました。ウィキペディアの編集については既に或る程度知っていることでしたが、皆でオープンデータの地図を作るOpenStreetMapというのは初めてで、なかなか興味深かったです。これも集合知のひとつなのでしょう。説明の後の実習ではウィキペディアンのさかおりさんが、ウィキペディア編集のコツを教えてくださいました。初心者の質問に丁寧に応えてくださって嬉しかったです。

終わって会場を散策していると、高野一枝さんにばったり会いました。高野さんと知り合ったのは、ARGの岡本真さん企画のライブラリー・キャンプでした。その高野さんから、2019年の2月に沖縄県恩納村(おんなそん)へのツアーでウィキペディアタウンをやるという話を聞き、ぜひ行ってみたいと参加を申し込みました。ツアー直前に発行された『LRG』25号がウィキペディアタウン特集でしたので、もちろん購入して読んで行きました。

さていよいよ2月3日に沖縄に入り、翌4日に会場の恩納村文化情報センターへ向かいました。2階にある書架の間から沖縄の海が眺められる素晴らしい立地の会場を、センターの呉屋美奈子さんに御案内いただきました。ウィキペディアタウンはまず村内のさまざまなスポットを、文化情報センターの方に案内していただきました。私は「山田城(やまだぐすく)」が担当でしたので、特にそこは興味深くお話をうかがい、写真を撮りました。沖縄では城に当たるものを「グスク」と呼んでいます。山田城自体は現在無いのですが、城跡が国の史跡になっています。その城を巡る何百年も前の歴史が、センター職員の方から生き生きと語られることに驚きました。

昼食後にセンターに戻り、ウィキペディア編集の開始です。「山田城」グループはセンターのお二人、ツアーからは私ともう一人の4人組。記事自体は既にウィキペディアにあるのですがとても簡単だったので、皆で情報を追加していくのです。本文担当と写真・参考文献担当に別れ、できたところから既存ページに追加していきました。東京からの参加者は現地の情報には疎いですが、参考文献の使い方は皆経験豊富でしたので、掲載事項にきちんとした典拠を次々追加することができました。途中で編集方法がよくわからないところは、東京からZoomで参加していたベテランウィキペディアンの海獺(らっこ)さんにいちいち質問し、皆でなるほどと納得しながら作業をすすめました。なんとか時間内に一応の編集を終え、グループごとの成果発表を行なってお互いに出来上がった記事を確認し、海獺さんに講評いただき、無事ウィキペディアタウンを終了することができました。写真はこの時記事を充実させた「万座毛」です。

ウィキペディアタウンは優れた取り組みだということがよくわかりましたが、その一方で、私自身の関心は地理や観光情報ではなく、音楽や文学なので、違うアプローチが必要なのかとぼんやり考え始めていました。そんな時に海獺さんからArt+Feminism Wikipedia Edit-a-thon 2019というイベントに誘われ、参加しました。これは女性やアーティストの情報をウィキペディアに載せる催しで、講師はさえぼーこと北村紗衣さんと海獺さん。15名ほどの参加者にはベテランののりまきさんや、某大手書店のEさんもいらっしゃいました。Eさんには渋沢財団の仕事や図書館総合展でもお目にかかっていましたが、Wikipediaもやっていることにお互い驚いたものです。この時私は前から書きたかったある日本人について、いろいろ教わりながらアウトラインを自分のサンドボックスに入れてみました。一方Eさんはじめ何人もの方が翻訳記事に取り組んでらっしゃったので、外国語記事の翻訳というのに興味を持ちました。

このイベントの後、海獺さんに教えてもらったウィキペディアの姉妹プロジェクトである「ウィキデータ」の勉強会にも2回参加し、概要を頭に入れました。また主宰の東修作さんや参加者のSyohei Araiさんと知り合うこともできました。最近になって大向一輝さんがウィキデータについて「すべてがQになる」という文章で触れておられるのを読み、ウィキデータの存在理由がよくわかってきた気がします。このウィキデータは翻訳記事を作るときなどに実に役立つのです。私は説明できるほど詳しくは無いのですが、ウィキデータを知って世界が一段と広がったのは事実です。今ではなにかウィキペディアの記事を捜して開くと、それに該当するウィキデータを開き、「説明」欄が空欄ならウィキペディアの定義文からコピーして補う、というのが習慣になりました。こうすると「ああ、今日もウェブの世界に一つ貢献できた!」と幸せな気持ちになるのです。

■参考情報

  • 『LRG:ライブラリー・リソース・ガイド.25号 ウィキペディアタウンでつながる、まちと図書館』アカデミック・リソース・ガイド, 2019年1月
  • 大向一輝「すべてがQになる:ウェブにおける「表現」と「対象」」『LRG:ライブラリー・リソース・ガイド. 27号 特集:情報学は哲学の最前線』アカデミック・リソース・ガイド, 2019年6月, p102-105