江渡浩一郎さんがWikiについて書いてらっしゃるというので、調べたらこの本がみつかりました。2009年とずいぶん前の出版ですが、WikiそしてWikipediaの誕生について非常にわかりやすく書いてらして参考になりました。Wikiの起源を調べていくうちに建築家クリストファー・アレグザンダーに行き着いたとのことで、アレグザンダーの思考から説き起こされており、これまで知らなかったWikiの背景が一気にひろがりました。技術的な事はよくわからない部分もありますが、目次を書き出すことで未知の言葉が脳裏に刻み込まれます。江渡さんと出会ったのは2012年のライブラリーキャンプでしたが、この本を書かれたすこし後だったことがわかりました。そして江渡さんが建築や美術について造詣が深い理由が理解できました。
パターン、Wiki、XP:時を超えた創造の原則 / 江渡浩一郎
技術評論社、2009
xiv, 208p (WEB+DB press plusシリーズ)
ISBN 978-4-7741-3897-8
目次:
はじめに…iv
謝辞…vi
- 序章 パターン、Wiki、XPの起源へ…1(Wikiとの遭遇/Wikiとブログ・掲示板の違い/Wikiの正確な定義とは/Wikiをどう使えばよいのか/Wiki誕生の背景を探る/WikiWikiWeb/HyperCardによるパターンブラウザ/ソフトウェア開発におけるパターン/クリストファー・アレグザンダーによるパターンランゲージ/建築、ソフトウェア開発、Wikiの歴史を探る)
第1部 建築…9
- 1章 クリストファー・アレグザンダーによる美の原理の追求…10(アレグザンダーの生い立ち/「美」の根本原理の追求/初期の実験/『形の合成に関するノート』ー設計プロセスの数学的な形式化/要求条件を1つにまとめあげるダイアグラムの発明/ベイエリア高速鉄道の計画立案-要求条件の膨大な関係性の計算/「都市はツリーではない」ー多様な関係性の発見/数学的な形式化に対する自己批判)
- 2章 アレグザンダーの6つの原理…25(『人間都市』ー人間を疎外しない都市のあり方/『オレゴン大学の実験』ー利用者参加による建築のための「6つの原理」/市民によるバークレーの再建ー利用者参加による街作りの実験/コラム:『オレゴン大学の実験』におけるブランコの比喩)
- 3章 パターンランゲージ…33(パターンとパターンランゲージ/『パタン・ランゲージ』ー利用者と建築家の共通言語/パターン形式/パターンの具体例/数学的理論による設計から、利用者参加による設計へ)
- 4章 時を超えた建設の道…41(『時を超えた建設の道』ーパターンランゲージによる建築理論/無名の質ー生き生きとした建物や町が持つ特性/解題ー時を超えた創造の原則)
- 5章 パターンランゲージによる建築の実際…45(パターンランゲージの目指す方法論/日本におけるアレグザンダーの受容/盈進学園東野高校の建設/20年後の東野高校)
- 6章 アレグザンダーの現在…51(チャールズ皇太子のアドバイザへの就任/『The Nature of Order』ー普遍性を持つ幾何学の研究/パターンランゲージという思想)
第2部 ソフトウェア開発…55
- 7章 オブジェクト指向…56(ソフトウェア開発の世界へ/オブジェクト指向の勃興ーSmalltalk/オブジェクト指向とGUI/GUIの普及と一般化ーMacintosh/OOPSLAの設立ーオブジェクト指向に関するコミュニティの形成/ソフトウェア概念変革の時代)
- 8章 ソフトウェア開発へのパターンの適用…62(パターンランゲージをプログラミングへ応用する/「オブジェクト指向プログラムのためのパターン言語の使用」/繰り返し現れる構造に目を向ける人々/「Toward an Architecture Handbook」ーOOPSLA/ECOOP 1990/「Architecture Handbook Workshop」ーOOPSLA 1991/「Documenting Frameworks using Patterns」ーOOPSLA 1992/GoFの結成ーOOPSLA 1992/Hilside Groupの誕生/「Patterns: Building Blocks for Object-Oriented Architectures」ーOOPSLA 1993/PLoPの開催ーパターンランゲージコミュニティの形成)
- 9章 デザインパターン…72(『オブジェクト指向における再利用のためのデザインパターン』ーデザインパターンの誕生/パターン形式/デザインパターンの具体例/デザインパターンとパターンランゲージの共通点と相違点/デザインパターンの普及/その後のパターンの展開)
- 10章 プロセスへのパターンの適用…78(ソフトウェア開発における「6つの原理」/「開発工程の生成的パターン言語」ーコプリエンによるプロセスパターン/「エピソーズ」ーカニンガムによるプロセスパターン/C3プロジェクトーXP誕生の地/C3プロジェクトにおけるプラクティス/C3プロジェクトの進展/C3プロジェクトの結末)
- 11章 エクストリームプログラミング…89(『XPエクストリーム・プログラミング入門』ーベックによる開発プロセスの変革/価値、原則、プラクティス/アジャイルマニフェスト/『XPエクストリーム・プログラミング入門 第2版』ーXPの再定義/価値/原則/基礎プラクティス/応用プラクティス/XPを代表するプラクティス/組織パターン、プロセスパターンからXPへ/アレグザンダーの6つの原理と、XPのプラクティスの比較/XPとパターンの関係/利用者と設計者の関係を見直す/ソフトエア開発からアレグザンダーへのフィードバック)
第3部 Wiki
- 12章 HyperCardによるパターンブラウザ…110(Wikiの前身/Vivariumプロジェクトー子どものためのプログラミング環境の実験/HyperCardの誕生ー初めての実用的なハイパーテキスト環境/パターンブラウザの誕生ーHyperCardによるWikiの前身/複数人による共同編集の実験/コラム:CRCカードークラス構造の記述)
- 13章 WikiWikiWeb…118(World Wide Webの誕生/Web上の動的な基盤の形成ーフォームとCGIの誕生/WikiWikiWebの誕生/WikiWikiWebの名前の由来/Wiki記法ーHTMLを簡略化した構造化記法/WikiNameーキャメルケースにおけるリンク表現/Wikiカテゴリー逆リンクを利用したメタページの表現/Wikiとパターンブラウザの共通点と相違点)
- 14章 Wikiモードによるコミュニケーションパターン…129(Wiki上のコミュニケーション/コミュニケーションパターン/Wikiモード/Wikiページのライフサイクル/Wikiモードとコミュニティの成熟/コラム:パターン形式ーそれゆえしかし形式)
- 15章 Wiki設計原則…139(カニンガムが満たそうとした設計原則/アレグザンダーの6つの原理とWiki設計原則の比較/XPのプラクティスとWiki設計原則の比較/XPのプラクティスでWikiを使いこなす/C2 WikiがXPの発展に与えた影響/Wikiの本質とは何か)
- 16章 Wikiエンジン…147(WikiWikiWebのCGIスクリプト/文芸的プログラミングー文章のようにプログラムを書く/WikiBaseーWikiを舞台にした文芸的プログラミング環境/WikiBaseのコード共有/「WikiWikiWeb」から「Wiki」へ/さまざまなWikiエンジンの誕生と、Wikiサイトの発展/『Wiki Way』の出版とその後のWikiの広がり)
- 17章 Wikipedia…159(NupediaーWikipediaのルーツ/Wikipediaの誕生/コラム:UuUーWikipedia最古のページ/フェーズ1ーUseModWikiの時代/フェーズ1のトークページードキュメントモードとスレッドモードの分離/Wikipediaのルールと合意形成/フェーズ2ーWikipedia専用のWikiエンジン/フェーズ2のトークページースレッドモードの機能化/コラム:カニンガムの予言/フェーズ3ーMediaWikiの誕生/Nupediaの閉鎖とWikipediaの発展ー伽藍とバザール/Wikimedia財団の設立/Wikipediaが成功した理由/コラム:Wikipediaを「Wiki」と呼んでいいか)
- 18章 Wikiの現在…174(Wiki企業の誕生/個人でのWikiの利用/さまざまな領域に特化したWikiエンジン/概念としてのWikiの利用/アラン・ケイによるWikiエンジン)
- 終章 時を超えた創造の原則…181(アレグザンダーの思想が及ぼした影響/建築/ソフトウェア開発/Wiki/「無名の質」を追い求める/時を超えた創造の原則へ)
参考文献…186
あとがき…193
索引…197