Wikipedia執筆記事の記録:2023年3月 = Wikipedia Writing Article Record: March 2023

ウィキペディアのロゴ(Wikimedia Foundation, CC BY-SA 3.0)

■Abstract: Ana BlandianaNina SadurMarina WischnewezkajaDoina RotaruLinda Catlin SmithTokyo Philharmonic SocietyPanmusic Festival Tokyo

2023年3月のウィキペディア執筆メモです。

3月3日から8日まで、「WikiGapイベント/オンライン2023」が開催されました。雛祭りから国際女性デーまでの6日間に女性の記事をウィキペディアに増やそうというイベントなので、今回も3人の女性の記事を翻訳して出しました。「アナ・ブランディアナ」は1942年生まれのルーマニアの詩人で、1989年のルーマニア革命後は政治家としても活動しています。日経新聞コラムに詩人の四元康祐が紹介していて知りました。2019年に香港で開催された詩祭に参加したブランディアナは、困難な状況下の香港詩人から受け取ったメッセージに対し、「あの子たちは知っているのよ。この戦いに勝ち目がないということを。それでも戦い続けるしかないのだと」語ったそうです。多くの困難を生き抜いてきた詩人の言葉に深く頷きました。

あとの2人「ニーナ・サドゥール」と「マリーナ・ヴィシネヴェツカヤ」は、1950年代生まれのロシアの作家。ロシア文学沼野充義と恭子夫妻編訳による現代ロシア小説傑作選『ヌマヌマ』(河出書房新社、2021)に載っていた作品の著者です。この本は明治学院大学図書館を2022年3月に退職する際、希望して記念品としていただきました。その年の1月にトルストイ戦争と平和』を読んでいる最中に『ヌマヌマ』の書評が新聞に出て、興味を持ったのです。その直後2月にウクライナ侵攻が始まり、ロシアのことを知らなくてはと直感しました。実際に本のページを開くまで1年かかりましたが、全く知らなかったサドゥールとヴィシネヴェツカヤの作品を読んでみると、なるほど現代ロシア人の生活感、人生観というのはこういうものなのかというヒントがたっぷり詰まっていました。この小説集は引き続き読む予定です。今回WikiGapにとりあげた3人とも私とほぼ同世代ですが、ずいぶん異なる世界を生きてきたのだなあと思います。

3月5日には国立音楽大学教授井上郷子さんのピアノリサイタルを聴きました。井上さんはチューバ奏者坂本光太さんを始めとした若い演奏家たちとしばしば室内楽を共演されているので知りました。とてもすてきなコンサートでしたので、ブログに概要を書いておきました。これまでたくさんの現代の作曲家を取り上げてらっしゃいますが、その中でウィキペディア日本語版に記事のなかった「ドイナ・ロタル」と「リンダ・カトリン・スミス」を翻訳してだしました。ロタルはルーマニア、スミスはアメリカ生まれのカナダの作曲家です。偶然ですがルーマニアの女性詩人と作曲家を知ることになり、ルーマニアという国にも興味がわいてきました。そして同時代の女性作曲家を取り上げ、作品を委嘱し演奏しておられる井上郷子さんの音楽家としての姿勢に心からのエールを送ります。

3月25日のオーケストラ・ニッポニカ演奏会に向けて、とりあげた5人の作曲家(山田耕筰、永冨正之、武満徹、石井眞木、野平一郎)関連の事項をいろいろ調べました。山田耕筰については既に詳しい記事がウィキペディアに載っていましたが、演奏する『曼陀羅の華』を初演した「東京フィルハーモニー会」については詳しい記事が無かったので調べて出したところ、「新しい記事」に選ばれ嬉しかったです。その後、信頼できる典拠資料が見つかったので、いくつか書き改めておきました。

もう一人、石井眞木は作曲だけでなく数多くの音楽祭を企画、実施していたので、その中のひとつ「パンムジーク・フェスティバル東京」を調べて出しました。この音楽祭の前身「日独現代音楽祭」について、2年前から調べ始めたのにたいした資料が見つからず、ずっとペンディングのままでした。それが昨2022年12月NDLデジタルコレクションに全文検索機能がついたとたん、関連資料がたくさん見つかったのです。そのおかげで一通りの記事を書くことができました。音楽祭というのは終了してしまうとどんな作曲家のどんな曲が演奏されたのか調べるのがなかなか大変なので、これからも折をみて記事にまとめていきたいと考えています。

その他に3月は新聞書評で見た『傷つきやすいアメリカの大学生たち』(草思社、2022)を読み、英語版にあった記事を翻訳して出したところ「新しい記事」に選ばれました。1995年以降に生れたいわゆるZ世代(本の中ではiGen = iGeneration)が大学生となり、アメリカの大学で新たに引き起こしてきた数々の問題について分析し、その対応について提案している本です。本の中で付箋を貼った箇所をブログにまとめておきました。この本を読むと、そうした世代の存在を決して悲観視せず、さまざまな方策で対処しようとしてる著者たちの活動があることがわかり、アメリカという国の一つの側面が理解できます。日本にそのままあてはめるわけにはいかないにしても、多くのヒントが得られると思いました。

月末には東京大学情報学環吉見俊哉教授の最終講義「東大紛争 1968-69」のアーカイブ配信を視聴しました。私は東京の高校生として東大紛争をリアルタイムで経験しましたので、興味深かったです。吉見教授は社会学者としての立ち位置も明確に述べられていてよく理解できました。情報学環渋沢栄一が設立に関わった東大新聞研究室にルーツを持つことも、不思議な縁を感じます。これに関連したことを何かウィキペディアに書けるかどうか考えています。

■参考